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リュウジン《龍神》

リュウジン《龍神》

『古事記』表記なし
『日本書紀』表記なし(霎神?)
別名 
祭神名 
系譜 
属性 
後裔 
祀られている神社(全国)戸隠神社、箱根神社、龍穴神社、他
祀られている神社(名古屋)樫ノ木龍神【廃社】(西区)、樫ノ木龍神(西畑町)(昭和区)、龍神社(本宮町)(港区)、八龍神社(大森八龍)(守山区)、櫻ノ宮龍神(南区)、龍神社・辨天社(蝮ヶ池)(千種区)、白龍神社(白龍町)(瑞穂区)、夜叉龍神社(中村区)、白龍神社(名駅南)(中村区)、他

龍の起源はどこまで遡る?

 龍の起源は古く、どこまで遡れるかは分からない。古代中国の殷(紀元前17世紀から紀元前11世紀)の時代に龍(ロン)という文字があったというから、龍の概念はそれより古いとも考えられる。
 西洋のdoragon(ドラゴン)はシュメール(紀元前35世紀)まで遡るというからもっと古いということになる。
 古代インドのインド神話には蛇神のナーガ(龍衆)が登場する。コブラを神格化したものともされ、中国に伝わったときに竜とされた。
 その他、ワニの化身ともされる。
 龍というのはそれらのイメージを総合した架空の霊獣ということになるのだろうけど、かつて地球上に存在し、絶滅した恐竜の古い記憶が龍という架空の生きものを生みだしたのかもしれない。

日本に伝わったのは本当に弥生時代なのか

 日本へは中国から伝わったとされ、それは弥生時代後期だろうというのが通説となっている。
 線刻龍文土器を龍に対するある種の信仰だと考えるなら、すでに弥生人は龍について共通認識を持っていたということになるだろうか。
 邪馬台国の卑弥呼に送られたとされる銅鏡(三角縁神獣鏡とも)にも龍文様が刻まれていたとされ、画文帯神獣鏡などからも少なくともこの時代の一部の日本人(倭人)は龍について知っていたと考えてよさそうだ。
 中国においては、秦の始皇帝(紀元前259-紀元前210年)が龍を皇帝の象徴としたとされている。
 日本では古くから蛇信仰があり、それが龍信仰と習合したとする考え方が一般的だ。
 ただ、龍は空を飛ぶ生きものであるのに対して蛇は空は飛ばない(飛びかかってはくるけど)から、最初から蛇と龍を同じとしたとは考えづらい。龍という名の伝説の生きものがいるらしいという話を聞いて半ばそれを信じたのではないだろうか。

龍(竜)のつく言葉

 竜は龍の略字だと思っている人が多いかもしれないけど、竜は龍よりも古い文字でもある。
 恐竜は竜を使うことから竜の方が生きもの感が強いようにも思う。
 西洋のドラゴンを紹介するときに竜の字を当てた。
 他に辰という字を当てて龍のこととした。十二支で唯一実在しない想像上の生きものが辰=龍だ。
 中国で竜門を超えた魚は龍になるという伝説から登竜門という言葉が生まれ、浦島太郎が行ったのは竜宮城だった。
 他に龍(竜)のつく言葉としては、龍脈、龍穴、竜巻などがある。
「逆鱗に触れる」は、龍の顎の下に一枚だけ逆さまに生えた鱗を触ると龍が怒り出すという『韓非子』に書かれた話から生まれた言葉だ。

龍神信仰はいつ始まったのか

 龍神信仰がいつ頃から始まったかも難しいところだ。龍神を意識して祀るようになったということでいえば、カミに対する祭祀と関わりがあるだろうし、もっと具体的なことでいえば仏教伝来以降ということになるかもしれない。
 中国の伝説の霊獣という概念と、古代インドのナーガと、日本古来の蛇神信仰があわさって少しずつ形作られていったと考えてよさそうだ。
 日本における龍神は水との関わりが深いので、水神が龍神に変化していったというのもひとつのパターンとしてある。
 日本神話に出てくる高霎・闇霎を龍神とする考え方もある。
 龍神が雨を降らせたり、池の主を龍神と考えるようになったのはそれほど古い時代のことではないかもしれない。神仏習合した中世以降のことではないかと思う。
 あるいは、竜宮というくらいだから海に棲む神を竜神と考えていたとすれば、龍神信仰は思っている以上に古いのかもしれない。
 古代神話に登場する八岐大蛇も大蛇という字を当ててはいるけど竜のイメージもある。

龍神は神でもあり仏でもある

 神道の龍と仏教の龍という分け方をするなら、それぞれの代表が九頭龍と八大龍王ということになるだろう。
 九頭龍伝説は日本各地に伝わっているのだけど、代表的なのは戸隠神社(長野県)と箱根神社(神奈川県)だ。白山を開いた泰澄の前に九頭龍が現れたことから白山信仰とも深い関わりがある。
 他にも鹿野山(千葉県)や近江国三井寺(滋賀県)、阿蘇山の宝池などに伝承が残り、九頭竜川、九頭竜湖などもある。
 平城京にも九頭竜伝説があり、龍穴神社(奈良県)は空海が修行した場所に祀られたとされる。室生寺は龍穴神社の神宮寺とされる。
 八大龍王は古代インドのナーガが中国を経て日本に伝わってきた。釈迦の教えを聞いた眷属のひとつで、法華経の守護神になったとされる。仏教の神様の天部に属す。
 日本では雨乞いの神として祀られた。
 陰陽道の四神獣の中に青龍がいる。東方の守り神で、道教とも関わりがある。
 色の龍でいうと、白龍、黒龍、金龍、紅龍、黄龍がいる。これらは風水で語られることが多い。

龍神の持つエネルギー

 以上のように龍神信仰というのは非常に古くから存在し、時代ととも形を変えて伝わってきたことが分かる。それは現在にもしっかり受け継がれ、龍神というのは他の神様とは違う一種独特の存在として扱われている。
 そもそも龍神は神なのか? という問いに対して明確に答えることは難しい。龍神信仰の人にその問いをぶつけたら人それぞれ様々な答えが返ってくるだろう。
 土地そのものとも言えるし、エネルギーと言ってもいい。
 龍神がついているみたいなことが言われることもあり、そうなると信仰というよりスピリチュアルの分野になってしまうのだけど、そういう語られ方をすることも確かだ。
 財界人や政治家、著名人で龍神信仰の人も少なくない。パワースポットということで龍穴巡りをしている人たちもいる。
 龍が持っている珠は如意宝珠といって人々の願いを叶えてくれるとされる。漫画の「ドラゴンボール」はそこから来ている。
 そのこともあって、昨今の風潮としては龍神を信仰するというよりも龍神に願いを叶えてもらおうということが優先してしまっている感もある。
 龍神は—それがどんな存在であれ—力がある存在なのだろうけど、安易に力を借りようとするのは危険ではないかと私は思うのだけどどうだろう。龍神の力は善でも悪でもなくただのエネルギーとするならば、それを良い方に使うか悪用するかは人間次第ということになる。使い道を間違えると自分に跳ね返ってきそうだ。
 触らぬ神に祟りなしという言葉もある。個人的には龍神とは少し距離を置きたいと思っている。もちろん敵対したくはないのだけど。

名古屋の龍神信仰

 名古屋における龍神信仰がいつくらいからあったのかはよく分からない。たとえば熱田神宮にも龍神社はあるけど、それがいつから祀られていたのかは不明だ。中世以降なのかそれ以前からなのか。
 龍の名のつく神社としては、樫ノ木龍神【廃社】(西区)、樫ノ木龍神(西畑町)(昭和区)、龍神社(本宮町)(港区)、八龍神社(大森八龍)(守山区)、櫻ノ宮龍神(南区)、龍神社・辨天社(蝮ヶ池)(千種区)、白龍神社(白龍町)(瑞穂区)、夜叉龍神社(中村区)などがある。
 一番オススメは、中村区の白龍神社(名駅南)だ。あそこの奥社には強烈なエネルギーが渦巻いていて何かがいる。あれが龍神というものなのだろうか。

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