笠寺観音門前の宝生池のほとりにある白龍社。 社名は「白龍」ではなく「白瀧」となっている。何か特別な意味があるのか、ちょっとしたこだわりなのか。 建てられたのは昭和46年と新しいのに妙に古びている。お堂自体は昭和57年に再建されたというのだけど、そんなふうには見えない。 お堂に掛けられた説明板には「此の白竜大神は熱田神宮の楠御前社、柳橋の白竜神社の御姉妹で霊験灼かな竜神様です御命日は毎月十日で大祭は毎年四月上旬にとり行います 此方は願掛け竜神と申されて特に病災の平癒は御神徳を頂けます 平成3年節分」と書かれている。 文字がかなり薄れていて、平成3年のものとは思えない。このあたりは物を急速に古びさせるエネルギーでも発しているのだろうか。
それにしても、熱田神宮の楠御前社と柳橋の白龍神社(名駅南)の姉妹の竜を祀るとはどういうことだろう。 熱田神宮の楠御前社(くすのみまえしゃ)は文字通り楠の木を御神体として伊弉諾尊(イザナギ)・伊弉册尊(イザナミ)を祭神としている。もともとは白竜神を祀っていたということか? 柳橋の白龍神社は、本社に須佐之男(スサノオ)を祀り、奥宮の龍神社で龍神を祀っているのだけど、もともとは江川に架かる柳橋の近くにあった柳の木に土地神を祀っていたものだ。のちに柳の木がなくなったときイチョウに移して祀り、龍神としたという経緯がある。今は高龗神(たかおかみのかみ)を祀る。 この二社と笠松観音の白竜大神との関係はどういったものなのか。昭和46年創建というなら時期的にはかなりズレがある。それに、熱田神宮の楠御前社と柳橋白龍神社のつながりも聞いたことがない。そう主張するからには何らかの根拠があるのだろうけど、それは分からない。そのあたりを説明板に書いておいてほしかった。
『南区の神社を巡る』にちょっと面白い話が紹介されている。 笠寺観音門前にある宝生池には龍が棲んでいて、通りかかった馬が龍を見て驚いたため、馬子が山刀を龍に向かって投げつけたところ、山門に掛けてあった金龍黒塗丸額がふたつに割れて落ち、それ以来龍は出なくなったと伝わっているというものだ。 駄目じゃんと思うのだけど、それ以来馬が安全に通れるようになってめでたしめでたしみたいな締めくくりになっている。龍神より馬の方が大事という人間の身勝手さを戒める話というわけでもなさそうだ。 その金龍の額は本堂にあるそうなのだけど、一般参拝者が見ることはできないのだろうか。 今の宝生池にいるのは亀くらいなもので、本堂では亀のエサを売っている。
白瀧大神の隣には辧才天のお堂がある。こちらは江戸時代にはすでにこの場所にあったようだ。 白瀧大神と辯才天は、笠寺観音の所属になるのだろうか。敷地としては笠寺観音(笠覆寺)の境内なのだと思う。すぐ東にある笠寺稲荷は西福院の敷地のようだ。
水のあるところと猫のいるところは良い寺社と勝手に思っている。そのふたつは良い気の流れをもたらすと思うからだ。 猫はともかくとして、池はもう少し大事にしてほしい。あまりきれいな状態ではないのが気になった。清らかな水をたたえていれば、そのうちまた龍神さんも戻ってきてくれるかもしれない。
作成日 2018.3.2(最終更新日 2019.8.22)
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