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八劔社(熱田一番)


正統派二枚目のようなキリッとした神社



八劔社拝殿

読み方はっけん-しゃ(あつたいちばん)
所在地名古屋市熱田区一番2丁目27-9 地図
創建年1813年(江戸時代後期)
旧社格・等級等村社・十二等級
祭神日本武尊(やまとたけるのみこと)
アクセス地下鉄名港線「六番町駅」から徒歩約17分
駐車場 なし
その他例祭 10月10日
オススメ度**

 熱田区は熱田神宮web)のお膝元ということで熱田神宮から勧請した神社がたくさんあるかと思いきや、これが意外に少ない。熱田社が2社、八劔社が1社しかない。それは名古屋市全体にも言えることで、熱田関連神社はたくさんあっても直接の分社のような神社は多くない。これは熱田神宮を考える上でちょっとしたヒントになるかもしれない。
 八劔社は熱田神宮の別宮・八剣宮web)から勧請されたものだろう。熱田の八剣宮ももともとは八劔という字を使っていたと思うのだけど、現在は八剣の表記になっている。八剣宮から勧請したところが本来の八劔を使っているところが多い。大森八劔神社(やつるぎじんじゃ)や天白区野並の八劔社(はっけんしゃ)、八劔社(剣町)などもそうだ。
 熱田神宮の八剣宮とは何かということ、これが難しい問題で、なかなか正体は見せてくれない。
 天智天皇時代の668年に新羅の僧・道行によって草薙剣が盗まれ、嵐にあって出航できずに捕まり、取り返したもののそのまま宮中に置かれることになり、代わりの剣を造ったか宮中から送られたかで、それを祀るために建てたのが八劔宮(当初は八劔神社)とされている。
『日本書紀』や熱田社縁起などに書かれている話なのだけど、全面的に信じていいとは思えない。熱田神宮の公式見解では、新剣を造らせたのは元明天皇で708年のこととしている。しかし、686年に天武天皇が病気になり、占ったところ宮中にある草薙剣の祟りということになって草薙剣は熱田社に戻されたことになっている。にもかかわらず、708年に新剣を造る必要があっただろうか。
 これにまつわる興味深い話が南区の八劔社(鳥栖)に伝わっている。盗まれた草薙剣の代わりを作ったのは鳥栖のあたりで、それは708年のことだというのだ。
 真実は闇の中で分からないのだけど、確かなことは『延喜式』神名帳に八劔神社(ヤツルキ)として載っていることだ。平安時代中期において、八劔社は熱田社とは別の独立した神社として官社になっていた。



 熱田一番にある八劔社の創建は江戸時代後期の1813年(文化10年)のこととされている。
 江戸時代前期の1646年。尾張藩初代藩主の徳川義直は、石高を増やすために熱田新田の開発に乗り出した。
 熱田社や熱田の宮宿がある熱田台地より南西部は、江戸時代前半はまだ海だった。熱田の湊から桑名までの七里の渡しも、当初はほぼ直線上で結んでいた。
 熱田区、港区、中川区にある一番とか六番とか十一番とかいう町名が気になっていたという人がけっこういるかもしれない。これは熱田新田の番割の名残だ。
 遠浅だった海を干拓によって陸地化して、そこを農地にした。一番割から三十三番割までに区割りした。熱田一番というのは、その中の一番割だったところだ。
 三十三の区割りには西国三十三ヶ所にならって観音を祀った。
 同時に番割の氏神として神社も創建した。



 この八劔社はそういう土地に創建された神社だったわけだけど、何故1813年だったのか。
 熱田新田は1649年に完成している。藩主導のものだったから入植者も多かったはずだ。にもかかわらず160年以上も神社なしで村人たちは過ごしていたのだろうか。観音様があればそれ充分と思ったのか。
 新田ではアマテラスを祀る神明社が定番で、八劔社は例外だ。江戸時代後期という時代性なのか、一番割の住人たちが望んだのか。1800年代になってもはやここは田んぼだけの集落という性格ではなくなっていたのかもしれない。
 それにしても、あえて八劔社を勧請したのはどういう理由だったのかが気になるところだ。よく分からないとしか言いようがない。



 八劔社の現在の祭神は日本武尊(ヤマトタケル)になっている。しかし、本家の八剣宮はヤマトタケルを主祭神としていない。今の祭神は熱田神宮と同じ神としており、主祭神は熱田大神だ。江戸時代の人たちの認識としては八剱神社の神はヤマトタケルだったのだろうか。
『尾張志』(1844年)は一番割の氏神とするだけで祭神については書いていない。
『尾張徇行記』(1822年)の中で熱田一番の神社に関する記載は見つけられなかった。



 神社としての雰囲気はよかった。開放的なのに落ち着くという、ちょっと不思議な感じもあった。気持ちのいい日本庭園にいるような気分とでも言おうか。
 男性的か女性的かといえばやはり男性的だけど、八幡社のような雄々しさではなく、もう少しシャープでキリッとした感じだ。シュッとした二枚目のような神社といった印象が残った。




作成日 2017.4.27(最終更新日 2019.8.29)


ブログ記事(現身日和【うつせみびより】)

真面目でいい神社、熱田一番の八劔社

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