恵比子神社(平中町)

えびす信仰の歴史を今に伝える

平中町恵比子神社

読み方 えびす-じんじゃ(ひらなか-ちょう)
所在地 名古屋市西区平中町 地図
創建年 不明
旧社格・等級等 不明
祭神 不明
 アクセス 名鉄犬山線/地下鉄鶴舞線「上小田井駅」から徒歩約21分
駐車場 なし
webサイト  
オススメ度

 江戸時代ここは平田村で、平田村には十所社(十所大明神)、白山社、神明社、天神社、三狐神社(社宮神)、八幡社の6社があったと江戸期の記録にある。確信は持てないのだけど、恵比子神社はこの中の三狐神社(社宮神)に当たるのではないかと思う。

 神社はやけに吹きさらし感が強い。境内を囲む玉垣や鳥居などがないため境界線といったものがない。一応、本社のある区域は瑞垣で囲ってはいるのだけど、これでは神様も落ち着かないのではないか。
 本社の横に「西宮夷大明神」と刻まれた石碑と、神社の由緒を書いた石碑が建っている。残念ながら由緒書きはすっかり薄れてしまってほとんど読み取れない。ただ、西宮と呼ばれていたということは手がかりとなる。
 もともとこの場所にあったのではないかもしれない。170メートルほど東にある泉増院(せんぞういん/地図)との関係が考えられる。

『尾張徇行記』にはこうある。
「泉増院書上ニ、喬木山西宮神社内廿歩御除地、此社勧請年紀ハ不知、再建ハ天正十二甲申年也」
 ここでいう喬木山西宮神が現在の恵比子神社だとすれば、創建年は不明ながら再建は天正12年(1584年)ということになる。
 同じく『尾張徇行記』の泉増院のところに、天文5年(1536年)に創建(もしくは再建)で、かつては寺の一町西に喬木山と号する宮があり、喬木山は泉増寺の山号なので、そこまで境内だったのだろうと書いている。
 一町は約109メートルで、そこに喬木山という宮があったということで、それが西宮社のことではないかと思う。だとすれば、西宮社(恵比子神社)は、泉増院の鎮守社として建てられた可能性が高い。

 三狐神、社宮司、西宮、石神、斎宮神は表記こそ違えども、民間信仰のミシャクジ信仰から来ていると考えていいだろうか。「サンコシン」、「シャグウジ」、「サイグウ」、「イシガミ/シャクジン」などと呼んでいたものに漢字を当てたものだ。
 西宮といえば、兵庫県西宮市の西宮神社(web)が思い浮かぶ。ここの祭神は西宮大神で、これは蛭子命(ヒルコ)のこととされ、えびす神社の総本社となっている。
 ヒルコは、伊弉諾尊(イザナギ)と伊弉冉尊(イザナミ)の最初の子だったのだけど不具だったため船に乗せて海に流したとする。そのヒルコは摂津国に流れ着き、夷三郎(えびすさぶろう)として育てられ、後に祀ったのが西宮神社の縁起とする。
 日本では古くから海岸などに漂着したものを彼方からやって来ためでたいものとして尊ぶ考え方があり、それを「えびす神」として祀った。
 えびすは、夷、戎、胡、蛭子、蝦夷、恵比須、恵比寿、恵美須などとも表記し、後に七福神の一神とされた。
 ヒルコとえびす神を同一視するようになったのは室町時代以降のことという。
 社宮司信仰は諏訪地方の古い神という話もあるのだけど、その実態はよく分からない。
 名古屋では、社宮司、石神、三狐、西宮あたりが混ざっているようで、この系統の神社を理解するのは一筋縄ではいかない。
 中川区あたりには、シャモジを奉納して願掛けをする風習が残っており、境内社として西宮社となっているところがいくつかある。海に近い場所では金比羅とも習合している感じで、理解をいっそう難しいものにしている。

 江戸期の書ですら、三狐社、社宮神、西宮などと表記が一定ではないところをみると、その時代にはすでによく分からないものになっていたのではないだろうか。
 現在の恵比子神社にある西宮夷大明神というのもひとつの呼び名だったのだろう。
 一般的な恵比須や恵比寿ではなく恵比子にしたのには何か理由があったのだろうか。
 泉増院は江戸時代にたびたび水害などで建物が壊れ、規模を縮小していったようだから、江戸時代すでに三狐社(社宮神/西宮)は外に出されたのか、それとも明治の神仏分離令で独立させたのか。
 そのあたりの詳しいいきさつについてもよく分からないというのが結論となる。

 境内はやや荒れた印象を受けるものの、流造の社はなかなか立派でそれほど傷んではいない。
 どこで管理しているにしても予算的には厳しいだろうけど、もう少し境内域をちゃんとすればきちんとした神社に再生復活できそうだ。
 えびす信仰の名残は貴重なので、ぜひ残していってほしいと思う。
 もし、この規模の神社でも現状維持が精一杯とすると、名古屋の神社の多くがじり貧といわねばならない。

ブログ記事(現身日和【うつせみびより】)

平中町の恵比子神社はあけっぴろげな感じ

HOME 西区

スポンサーリンク

Scroll Up