第2回 名古屋の神社の統計と傾向
最初にお断りです。
このサイトに登録している神社が名古屋に現存するすべてではなく、認識しているだけで10社ほど行けていないところがあり、ここ数年の間に合祀または廃社となった神社が少なくとも5社以上あります。
なので数字はおおよその目安と考えてください。必ずしも正確ではないということです。
このサイトに登録している神社数はおそらく712社だと思うのだけど、数え間違いがあるかもしれない(小社の扱いはバラバラだったりする)。
その中で神社本庁と包括的な関係にあるところはたぶん413社前後。
ただ、最初に書いたように廃社になったところもあり、まだ回っていないところもあるので700社ちょっとと考えると大きくは違っていないと思う。
まず、地域の傾向を見てみると、西高東低というのが明確にある。
一番多いのが中川区の101社で、ダントツに多い。
中川区は北側は古くからの土地で、南は江戸時代以降に干拓や埋め立てでできた新しい土地なのだけど、どのエリアにも満遍なく神社があるのが特徴だ。
次に多いのが南区の73社と港区の72社で、やはり名古屋の南エリアだ。
港区は江戸時代の干拓以降に誕生した土地なので、神社はすべて江戸時代以降に建てられたものということになる(一部は他から移されたものもあるかもしれない)。
南区も中川区と似ていて、南西エリアは干拓や埋め立て地で、そこにある神社は江戸時代以降のものだ。
新しい土地や村にはあらたに神社が必要だということで、開発地に神社が建てられてそのまま残ったのが名古屋南エリアの神社ということになる。
この地区は太平洋戦争の空襲被害が少なかったということもある。
ただし、昭和34年の伊勢湾台風では大きな被害を受けたところが多い。
逆に最小はというと、天白区の13社ということになる。
天白区はやや特殊な事情のある土地柄なので、ちょっと例外的なのだけど、次に少ないのが東区の19社、名東区の20社なので、東側に神社が少ないという傾向ははっきり出ている。千種区も24社しかない。
名古屋16区を多い順に並べるとこうだ。
中川区 101社
南区 73社
港区72社
熱田区 67社
中村区 66社
西区 55社
緑区 49社
中区 40社
北区 37社
瑞穂区 31社
守山区 30社
昭和区 28社
千種区 24社
名東区 20社
東区 19社
天白区 13社
西高東低の傾向は回っていたときに感じていたのだけど、ここまで偏りがあるとは私も思っていなかった。
歴史的な人口比とは少し違う気がするし、何か理由があるのだろうか。
続いて神社別の傾向を見てみよう。
全国では八幡社が一番多く、神社本庁関連でいうと8万社のうちの1割近くが八幡社だという。
名古屋も八幡社は多いのだけど一番ではなく二番だ。
一番多いのはなんといっても神明社で、99社もある。八幡社は約半分の58社でしかない。
神明社が多いのはやはり新規開拓した土地に伊勢の神宮から天照大御神を勧請して祀った例が多いからで、一部古い神明系の神社はあるものの、多くは江戸時代に建てられたものだ。なので、南エリアに多い。
次に多いのが秋葉社の67社なのだけど、これは小さな社も含めてということなので、鳥居がある秋葉社ということでいうとそれほど多くはない。
津島社・天王社の40社や、稲荷社の38社なども同じだ。
土地柄でいうと、八劔社が17社で、熱田社系の12社よりも多いという特徴がある。熱田社本社よりも別宮とされた八劔社の方が人気があったようだ。
白山社の25社もけっこう多い。名古屋は古い白山社が多く、古墳の上に白山社を祀りがちだ。他県の事情は知らないのだけど、名古屋の古い白山社は古墳とセットになっているところが多い。
龍神系の30社もわりと多いのではないかと思う。龍神は古いものから新しいものまで多様で、民間信仰系のところもあって、同じ系列で考えるのは少し無理があるかもしれない。
天満社と天神社はあわせて18社あるのだけど、これも一緒くたにしてしまうのは間違いだろう。
山神社は10社しか残っていないものの、江戸時代は大量にあって、その多くが村社などに移されて、現存数はそれだけになってしまった。江戸時代の地誌の『尾張志』などを見ると、各村々に一社どこではなく数社はあった。社を持たない石などもあわせたら相当数があったに違いない。
全国的に知られる日吉社系や三輪社系、貴船社などは2社しかなく、住吉や愛宕はそれぞれ1社しかないのも、一つの傾向といえそうだ。
火伏せの神といえば秋葉と愛宕がともによく知られているのだけど、名古屋では愛宕はまったく流行らなかった。秋葉は江戸時代には各村ごとではなく各家ごとくらいに祀られていた。
疫病除けの天王社もかなりあったようだ。
多い順に並べると以下の通り。
神明社 99社
八幡社 58社
秋葉社 67社
津島・天王 40社
稲荷社 38社
龍神 30社
白山社 25社
天満・天神社 18社
八劔社 17社
熱田社 12社
御嶽社 11社
山神社 10社
金比羅社 7社
若宮八幡 6社
六所社 6社
諏訪社 6社
浅間・冨士社 6社
宗像社 6社
迦具土 5社
須佐之男社 5社
弁天社 5社
春日社 5社
八王子社 4社
熊野社 5社
金山社 2社
塩竈社 2社
七所社 2社
日吉・山王社 2社
三輪社 2社
猿田彦社 2社
貴船社 2社
住吉社 1社
愛宕社 1社
なお、以上は神社名から拾ったもので、たとえばスサノオやサルタヒコなどを祀るという神社は他にもあるし、祭神別ということでいうとまったく違った傾向になることをお断りしておきます。
祭神別の傾向と統計もやれたらやりたい(すごく面倒そうだ)。
今後、市外編をやっていく中で、尾張国としての傾向も見えてくるのではないかと思う。
名古屋市内と市外ではやはり違いがあって、市外ならではの特徴もある。
名古屋市内はなんといっても名古屋城築城以降に城下町が発展して古い歴史を上書きしてしまったので、分からなくなってしまった部分が少なくない。なので、市外の方がむしろ古い歴史をとどめている。
いずれ尾張国の神社の傾向というテーマでも書いてみたい。