「神戸町どんぐりひろば」の中にある小さな社。 これまで見てきたどんぐりひろばの中で最もワイルドだ。野性味溢れるどんぐりひろばとなっている。 入り口からして草がボウボウで調査目的でなければ足を踏み入れるのがためらわれるほどだ。雨上がりに新しい靴を履いていきたくない。 木製の机の表面をステンレス版で覆い、その上に社を置いている。社自体はそれほど傷んではないものの、供えられた榊は当然のように枯れ放題となっていた。 問題はこの設置場所だ。背中側の植木が伸びて迫ってきていて、参拝スペースがものすごく狭い。90度の拝をするとおでこを机に打ちつけてしまいそうだ。社の後ろ側に余裕がないわけではないのに、どうしてこの場所のこの方角に設置したのだろう。 なかなか印象深い社ではあった。 祀っているのは熱田という場所柄、秋葉神の可能性が高い。もしくは屋根神を降ろして祀ったものとすれば、熱田・秋葉・津島の定番三社セットだろうか。 詳細については知る術もない。年に何回かは町内の人か誰かがお世話をしているのだろうけど、その人に訊ねても詳しいことが聞ける気がしない。
現住所は伝馬1丁目になっているけど、どんぐりひろばは神戸町(ごうどちょう)になっている。もともとここは神戸町だったところなのだろう。 神戸(ごうど)の地名は、833年(天長10年)に、朝廷が熱田社に奉納した神戸15戸が所在したことに由来するとされる。鎌倉から室町にかけては高戸郷と呼ばれていた。神戸町となったのは江戸時代からだ。 神戸(かんべ/じんこ)というのは、神社の祭祀を維持するために神社に附属した民戸のことで、この人たちが租税や課役を神社に納めていた。今の神戸町あたりに、朝廷から送られた神戸が15戸あったということだ。 伝馬1丁目、2丁目、3丁目は昭和56年(1981年)に成立した町名で、1丁目は市場町・内田町・神戸町・伝馬町・富江町・中瀬町の各一部から、2丁目は羽城町全域および内田町・神戸町・図書町・伝馬町・富江町の各一部から、3丁目は熱田東町・図書町・伝馬町の各一部から成った。 伝馬(てんま)の地名は、東海道の宮宿と隣の今道が伝馬役に任命されたことから町名となったものだ。 伝馬役というのは街道の宿場で輸送に使うための馬を管理したり輸送業務を担当したりする役割のことをいう。タクシー会社と宅配業を兼務したようなものだ。
どんぐりひろばはこういった小さな社を置くには適したところで、実際、熱田区もどんぐりひろば社といったものが多い。大事にされているところもあれば、こういうところもある。 どんぐりひろば自体の意義があるのかないのかという議論もあるのだけど、どんぐりひろばがなくなればそれに伴って社も廃絶の危機に陥りかねないので、こういった小さな社のためにはあった方がいいといえる。
作成日 2018.10.8(最終更新日 2019.9.18)
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